渋谷の事故で、耳慣れた言葉になったのが「セパレータ」である。
何故、ガスが漏れたのかはっきりしないが、このセパレータが重要な機能や役割を果たしていたことを、新聞やテレビで理解された方も多いと思う。そこで、セパレータの機能や構造について、一般的な事柄を説明したい。
セパレータは分離槽とも呼ばれ、化学プラントなどで使用されている重要機器の一つである。ただし、分離といっても、ガスと液体を分離するだけではなく、二種類の液体から片方を分離することもあるので、特に前者を気液分離槽と称する。
化学プラントの気液分離槽で扱う流体は多くは二相流と呼ばれ、ガスと液体がそれぞれ相をなし、物理的に分離した状態となっている。この二相流を気液分離槽に導入し、ガスと液体の比重差からガス中に同伴される液体粒子を分離すること、つまり、クオリティの高いガスを分離して回収するのが気液分離槽の目的である。
渋谷スパでくみ上げられた温水にどれだけの天然ガスが含まれていたのか不明であるが、様相としては温水とガスが二相になっていたのではなく、温水中に天然ガスが物理的に溶解していたと思われる。ガスの液体への溶解度は圧力が高いほど大きく、温度が低いほど大きい。つまり、地下深く存在した温水の圧力は極めて高いために、通常の状態ではありえないほど天然ガスが溶解していたものと思われる。
このような熔解したガスや沸点以上の液体を低圧で運転される気液分離槽に導入すると、ガスや蒸気は瞬時に膨張するので、機器などを過圧から保護するために適切な圧力制御を必要とする。このような気液分離槽を専門用語でフラッシュドラムという。
手持ちのデータブック(Chemical Properties Handbook)によれば、25℃の水に対するメタン(天然ガスの主成分)の溶解度は大気圧下で24.4wt.ppmであるから(意外と大きい!)、報道によれば地下1500mからくみ上げているので温水の圧力を単純に150気圧とすると、メタンの温水に対する溶解度は3660wt.ppm(= 24.4ppm×150)、つまり、0.366wt.%になる。(実際には温水の温度が高いこと、温水周辺に十分に溶解するだけの天然ガスが存在したかどうかわからないので、これほど多くないと思うが・・・)
この0.366wt.%は大した量でないと思うだろうが、地下からくみ上げた温水が地上に達したときには、圧力は大気圧まで低下するのでメタンガスは膨張する。例えば、温水量を毎時10トンと仮定し、メタンガスの容量は量を計算してみると、
(1) 温水量 毎時 10トン = 毎時 10m3
(2) メタンガス量 毎時 36.6キログラム = 毎時 51m3
つまり、体積比から見ると、全体の80%以上がメタンガスで占められることになる。もし、適切な圧力制御がなければ、あるいは圧力上昇を加味した設計でなければ、このようなガス膨張はセパレータやタンクなどの機器・配管に致命的なダメージを与える。
渋谷スパの場合、爆発が起きた際に、このように多量の天然ガスを含んだ温水がくみ上げられたかどうかわからないので、セパレータなどでガス膨張が起きたとは言えないが、ガスがリークして引火爆発するだけが建物や設備にダメージを与えるのではないということを理解してもらいたい。
あえて、爆発が起こった有様を想像すると、温水中に含まれていたメタンガス量が急激に増加し、そのために何らかの原因で緩んでいた機器と配管の接続部(フランジ)からガスがリークし、引火爆発したのではないだろうか。これから真相を究明すると思うが、既存設備の安全管理も含めて適切な報告が提出されるように希望している。
このような視点から渋谷の設備を考察すると、色々おかしなことに気がつくのである。これについては、機会があれば説明したい。
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