機械工学と化学工学 その1
大学および大学院で機械工学科を学んだ後、エンジニアリング会社に就職し、化学プラントのプロセスエンジニアとして20年以上働いてきました。その後、独立して有限会社コムテック・クウェストを設立し、今もプロセス設計の分野にどっぷりと浸かっています。
機械工学では流体工学を専門に勉強してきましたので、化学プラントの基盤である”化学工学”について勉強する機会はありませんでした。エンジニアリング会社に入ってからも化学プラントの専門用語を理解しながらプロセス設計に慣れることにほとんどの時間を費やしましたので、体系だって化学工学を勉強する暇はなかなかありませんでした。その中で曲がりなりにも化学工学に触れた最初の機会はアンモニア合成反応器の設計でした。それ以降、プロセス設計を行う中で化学工学に親しんでいき、いつの間にか問題解決に際しての化学工学的アプローチについて理解出来るようになりました。
この記事のタイトルとして”機械工学と化学工学”を選んだのは、機械工学と化学工学の狭間の中で右往左往した私の体験談を述べることで、読者の皆さん、特に若いエンジニアの方々のお役に立てればと思っております。
最初のエピソードは圧力損失の計算式の名称についてです。
例えば円管内を流れる際の摩擦によるエネルギー損失を機械工学では損失水頭(head loss)で表し、その計算式をダルシー・ワイスバッハの式(Darcy-Weisbach equation)と言っています。この損失水頭に流体の密度と重力加速度を乗じることにより圧力損失(流体単位体積当たりのエネルギー損失)を求める事が出来ます。一方、国内の化学工学分野では圧力損失を求める計算式をファニングの式と言っています。ダルシー・ワイスバッハの式は次元解析から得られた式で、ファニングの式は流体にかかるせん断力と圧力損失との関係から求められた式です。
化学工学を勉強することなくエンジニアリング会社に入りましたので、入社一年目に”ファニングの式”の意味を上司から問われましたが、答えることが出来ず、怪訝な顔をされたことを今でもはっきり覚えています。勿論、両方の式から得られる圧力損失は同じ値を示しますが、使用されている摩擦係数の定義が違っており、慣れるまで多少の時間を必要としました。
なお、ダルシー・ワイスバッハの式についてはウィキペディア日本語版で詳細を知ることが出来ますが、ファニングの式についてはウィキペディア日本語版には見当たりません。また、ウィキペディア英語版でも同様で、ファニングの式に関しては"Fanning friction factor"で検索してみて下さい。
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