システムインテグレーション その4 ”燃料システムへの影響”
前回に引き続き、余剰水素の挙動についてお話しします。この話を進めるためには、関係する燃料燃焼システムについてお復習いをする必要があります。
燃焼システムは燃料を供給する配管系、燃焼量を調節する制御系、そして燃料を燃焼させるためのバーナー系から構成されています。それぞれの系の仕様は燃料の種類によって異なりますが、ここでは円滑に話を進めるために気体燃料を使用する燃料システムに限定します。
先ほどの余剰水素の挙動に関係するのは制御系とバーナー系で、一般に気体燃料を使用するシステムではバーナーに供給する燃料を圧力制御で行います。つまり、燃料配管系に圧力制御弁を設けることで燃料の流量を制御します。制御弁の下流に位置するバーナーの挙動はノズルと同様で、バーナーを通過する燃料流量はバーナーで許容出来る差圧の平方根に比例し、燃料の分子量の平方根に逆比例します。これを式で示しますと、
燃料流量∽(差圧)^(1/2)、燃料流量∽(分子量)^(-1/2).
ここで先ほどの余剰水素と関連させて考えます。
余剰水素が燃料システムに流入する前の燃料組成はメタンや二酸化炭素などを多く含み、分子量は10程度ですが、余剰水素の分子量は約半分の5となります。燃料の制御は圧力で行っていますので、分子量の小さな含水素燃料が流入してきますと、同じ差圧でも流量は(分子量比)^(1/2)に逆比例します。つまり、流量は1.4倍に増加します。
ただし、含水素燃料の持つ発熱量が小さいので流量増加をある程度相殺出来ますが、なお一時的には燃焼量が増大します。また、バーナーフレーム(炎)の長さが分子量に逆比例しますので、この含水素燃料が流入するとフレームが長くなり、改質管内の温度分布を急激に変える可能性があります。これらの現象は改質管の熱履歴に大きな影響を与えることになり、そこから改質管の破裂というリスクを引き起こします。
このようにインテグレーションが何らかの理由で停止した際のリスクについて十分に検討し、設計等に反映する必要があります。
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