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2009年10月

2009年10月26日 (月)

プロセス開発と商品化 その1「プロセス開発と必要な技術」

今回から”プロセス開発と商品化”について述べていく予定です。第1回目は「プロセス開発とは」で、関連するキーワードは「フラスコからプラントへ」・・・。

実験室レベルで開発された製品を商品化するためには”プロセス開発技術”という特殊なテクニックが必要となります。何が特殊かというと、一般的なプラントエンジニアリングとは違って、プロセスの開発には”わからない”あるいは”経験していない”ことが多々あるからです。

一般的なプラントエンジニアリングは(誤解を招かないで欲しいのですが)マニュアルエンジニアリングです。これは実は仕方のないことで、ミスを少なくして品質を向上させるためには定型化あるいはマニュアル化したエンジニアリングがベースとならなければならないのです。

逆説的に言いますと、マニュアルを作成しようとする機運が出てくるタイミングは、そのプロセスの成長が止まる時期と重なっているようです。もちろん、これは私の個人的な意見ですが・・・。

プロセス開発においてプロセスエンジニアに必要な知識は、数多くの実験や試験から意味ある結果を抽出し、そこからエンジニアリングに必要なパラメーターを見出し、そしてエンジニアリングの段階で欠陥を探し出す洞察力です。

この洞察力を養うためには何が必要か。その一つはものの流れを想像できるイマジネーションです。

プロセスプラントは装置や機器、それを結びつける配管や制御弁などの計装機器から構築されており、その中を流体や物体が動き回ったり移動する有様を理解できれば必要なエンジニアリングが何か、そして起こりうるトラブルを未然に防ぐことが出来ます。そのためには流れ学あるいは流体力学についてもう一度学習することです。それも色々な流れの有様を実験やシミュレーションで理解することです。

具体的には以下のようなフローパターンですが、あなたも一度は見たことがあると思いますが・・・。

  • 曲がり付近のフローパターン
  • 容器から配管に流出する際のフローパターン(縮小)
  • 配管から容器へ流入する際のフローパターン(拡大)
  • 配管を流れる二相流のフローパターン
  • ノズルから流出する際のフローパターン
  • 圧縮機やポンプなどの回転機内のフローパターン

その次に必要なものは、三次元的なものの見方です。これについては次回に。

システムインテグレーション その7 ”インテグレーションの前に行うべきこと”

前回、スチームタービンの形式を復水タービンから背気タービンに変えることを提案いたしました。

スチームタービンで得られる動力は、入口スチームと出口スチームの各エンタルピーの差にスチーム流量を乗じた値になっています。復水タービンから流出するスチームの温度レベルはおよそ50℃ですので、そのエンタルピーは50℃の飽和蒸気のエンタルピー(2591kJ/kg)にほぼ等しくなっており、圧力は約12kPaと大気圧以下になっています。

一方、背気タービンから流出するスチームの圧力は大気圧以上で、スチーム・ユーザーが必要とする圧力に依存します。ここでは絶対圧力で0.4MPaとします。

質を向上させ、システムインテグレーションを容易に行えるようにしましょう

インテグレーションパーツの候補となる幾つかを示してみました。そこで今回はどうやってインテグレーションパーツを選ぶかについてお話しましょう。

インテグレーションを構築するために廃棄されているエネルギーの温度レベルと熱量を整理すること説明しましたが、実はこの”見かけ”の温度レベルと熱量でエネルギーの品質を判断することは適切ではないのです。

廃棄されるエネルギーが保有する温度レベルと熱量は、その上流側に位置する設備や機器の仕様により決定されておりますので、仕様を変えれば廃棄されるエネルギーの量や品質が変わってきます。

例えば、多くのプラントには多くのスチームタービンが採用されており、大型のプロセスガス圧縮機の駆動機としては復水タービンが、中小型の圧縮機やブロワーやファンには背気タービンが使用されています。背気タービンから流出するスチームの圧力レベルは0.3MPa~1MPaと言われており、プロセス用のスチームとして使用され、保有するエンタルピーが十分にリサイクルされています。
しかし、復水タービンから排出されるスチームの温度レベルはおよそ50℃ですので、量的なリサイクルは可能ですが、保有するエンタルピーを再利用することは現実的ではありません。

そこで、思い切ってこの復水タービンを背気タービンに変えてしまうのです。これにより排出されるスチームの質を向上させ、システムインテグレーションを容易に行えるようにしましょう。

そのためにはどうすれば良いでしょうか?

さて、この続きは次回に・・・。

2009年10月18日 (日)

システムインテグレーション その8 ”インテグレーションは整理整頓?”

スチームタービンの形式を単に復水タービンから背気タービンに変えると、同じ動力を得るために必要なスチーム量は増加します。

例えば、スチームタービンや遠心圧縮機などの回転機メーカーであるDRESSER-RANDのホームページから”Steam Products Estimation Tool”にアクセスして、復水タービンと背気タービン性能を比較してみよう。

前提は10,000kWの発電用スチームタービンで、入口スチーム条件を40bara & 350℃としてスチーム消費量を求めると、

  1. 背気タービン
    Inlet Pressure 40bara Flange Dia. 10 
    Inlet Temperature 350Deg. C
    Exhaust Pressure 3bara Flange Dia. 24 Exh. Temp. 133
    Inlet Flow 89,640kg/hr
    Desired Turbine Speed 3600rpm
  2. 復水タービン
    Inlet Pressure 40bara Flange Dia. 8 
    Inlet Temperature 350Deg. C
    Exhaust Pressure 0.16bara Flange Dia. 48 Exh. Temp. 56
    Inlet Flow 49,729kg/hr
    Desired Turbine Speed 3600rpm

両者のスチーム消費量を比較すると、背気タービンで約90ton/h、復水タービンで約50ton/hと大きな差がある。これではボイラー容量が倍近くになり、せっかく生み出した背気スチーム量も必要以上に多くなって使い道がなくなり、省エネルギーどころかエネルギーの浪費になってしまう。

ではどうすれば良いか?

唯一の回答は必要動力を減らすこと。つまり、徹底的に省エネを行って、必要動力を10,000kWから例えば6,000kW程度に減らすことで復水タービン並みにスチーム消費量を減らし、背気タービン形式の採用を可能にするのである。

なんだ、そんなことかと思われるかもしれないが、急げば回れでまず足元から省エネを行い、そこで生み出されたスチームを再利用して他のシステムとのインテグレーションに進む。

具体的な事案として、発電用スチームタービンと海水淡水化設備とのシステムインテグレーションを考えてみたい。

さて、この続きは次回に・・・。

2009年10月 9日 (金)

システムインテグレーション その6 ”インテグレーションパーツをなくせ!”

前回、インテグレーションパーツの候補となる幾つかを示してみました。そこで今回はどうやってインテグレーションパーツを選ぶかについてお話しましょう。

インテグレーションを構築するために廃棄されているエネルギーの温度レベルと熱量を整理すること説明しましたが、実はこの”見かけ”の温度レベルと熱量でエネルギーの品質を判断することは適切ではないのです。

廃棄されるエネルギーが保有する温度レベルと熱量は、その上流側に位置する設備や機器の仕様により決定されておりますので、仕様を変えれば廃棄されるエネルギーの量や品質が変わってきます。

例えば、多くのプラントには多くのスチームタービンが採用されており、大型のプロセスガス圧縮機の駆動機としては復水タービンが、中小型の圧縮機やブロワーやファンには背気タービンが使用されています。背気タービンから流出するスチームの圧力レベルは0.3MPa~1MPaと言われており、プロセス用のスチームとして使用され、保有するエンタルピーが十分にリサイクルされています。
しかし、復水タービンから排出されるスチームの温度レベルはおよそ50℃ですので、量的なリサイクルは可能ですが、保有するエンタルピーを再利用することは現実的ではありません。

そこで、思い切ってこの復水タービンを背気タービンに変えてしまうのです。これにより排出されるスチームの質を向上させ、システムインテグレーションを容易に行えるようにしましょう。

そのためにはどうすれば良いでしょうか?

さて、この続きは次回に・・・。

2009年10月 5日 (月)

システムインテグレーション その5 ”インテグレーションパーツを見つける”

インテグレーションを構築するためには、まず、利用されずに捨てられているエネルギーを見つけることです。そのためにはプラントの熱収支を計算して、廃棄されているエネルギーの温度レベルと熱量を整理します。

もちろんエネルギーには圧力エネルギーや化学反応熱などの内部エネルギーがありますので、熱量には生成熱量あるいは発熱量を含めることにします。また、圧力変化も温度変化に変換されていますので、温度とエンタルピーを計算することで事足りるでしょう。

圧縮機による圧力エネルギー増加は、吐出ガス温度上昇として現れています。例えば多段圧縮機の中間冷却器の熱負荷は、全段の圧縮軸馬力と等しいとして近似することが出来ます。

そこで廃棄されているエネルギー、つまりインテグレーションパーツの候補となる一例を示してみます。

  1. プロセス流体冷却器:下記の項目を除く冷却水などで捨てられている熱。一般には60~80℃以下の温度で、回収できる熱量としてはA、B、Cの中のBクラス。一部はボイラー水の予熱などに利用されているが、全てを回収することは出来ないので冷却器はなくならない。
  2. 循環系の冷却器:脱硫系や合成系など循環ループを構成する設備に設置されている冷却器。温度レベルが50~60℃以下と低く、循環流量が多いために熱量としては膨大である。回収できる熱量としてはA、B、Cの中のCクラス。
  3. 蒸留塔の凝縮器:温度レベルは蒸留塔の塔頂温度に等しく、60~70℃。ただし、熱量的には大きく利用価値があるのだが、凝縮器の設置場所が高所にあるなど、再利用する上で難しい点がある。
  4. 燃焼排ガス:燃焼炉からの排出ガスが有する熱量。温度レベルは100℃以上で利用価値があるが、圧力が低いためにエネルギー密度が低い。
  5. スチームタービンの凝縮器:スチームタービンからの排気スチームの凝縮器で、温度レベルは40~70℃。捨てられる熱量は膨大。

さて、ここからどうやってインテグレーションパーツを選択するのかは、次回に・・・。

2009年10月 1日 (木)

システムインテグレーション その4 ”燃料システムへの影響”

前回に引き続き、余剰水素の挙動についてお話しします。この話を進めるためには、関係する燃料燃焼システムについてお復習いをする必要があります。

燃焼システムは燃料を供給する配管系、燃焼量を調節する制御系、そして燃料を燃焼させるためのバーナー系から構成されています。それぞれの系の仕様は燃料の種類によって異なりますが、ここでは円滑に話を進めるために気体燃料を使用する燃料システムに限定します。

先ほどの余剰水素の挙動に関係するのは制御系とバーナー系で、一般に気体燃料を使用するシステムではバーナーに供給する燃料を圧力制御で行います。つまり、燃料配管系に圧力制御弁を設けることで燃料の流量を制御します。制御弁の下流に位置するバーナーの挙動はノズルと同様で、バーナーを通過する燃料流量はバーナーで許容出来る差圧の平方根に比例し、燃料の分子量の平方根に逆比例します。これを式で示しますと、

燃料流量∽(差圧)^(1/2)、燃料流量∽(分子量)^(-1/2).

ここで先ほどの余剰水素と関連させて考えます。

余剰水素が燃料システムに流入する前の燃料組成はメタンや二酸化炭素などを多く含み、分子量は10程度ですが、余剰水素の分子量は約半分の5となります。燃料の制御は圧力で行っていますので、分子量の小さな含水素燃料が流入してきますと、同じ差圧でも流量は(分子量比)^(1/2)に逆比例します。つまり、流量は1.4倍に増加します。

ただし、含水素燃料の持つ発熱量が小さいので流量増加をある程度相殺出来ますが、なお一時的には燃焼量が増大します。また、バーナーフレーム(炎)の長さが分子量に逆比例しますので、この含水素燃料が流入するとフレームが長くなり、改質管内の温度分布を急激に変える可能性があります。これらの現象は改質管の熱履歴に大きな影響を与えることになり、そこから改質管の破裂というリスクを引き起こします。

このようにインテグレーションが何らかの理由で停止した際のリスクについて十分に検討し、設計等に反映する必要があります。

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