システムインテグレーション その2 ”インテグレーションのリスク”
前回、「全体のエネルギー消費量を削減するための方策について説明する」と予告いたしましたが、インテグレーションがもたらすリスクについて説明しておきます。
リファイナリー・コンプレックスやエチレンプラントでは、上流設備で生産した製品が下流設備の原料となります。これも一種のインテグレーションです。しかし、両設備間に貯蔵タンクなどのバッファーが設置されている場合には、上流設備の異常がただちに下流設備への原料供給停止に直結していません。つまり、このような”緩いインテグレーション”では、上流側の運転停止により製品が一時的に下流側に供給されなかったとしても大きな混乱はなく、インテグレーション崩壊によるリスクは小さいのです。
これとは対照的なのが”アンモニアプラントと尿素プラント”のインテグレーションです。尿素の原料はアンモニアと炭酸ガスで、両方ともアンモニアプラントから供給されます。アンモニアは特殊なタンクに貯蔵されますので、アンモニアプラントの一時的な運転停止は下流設備である尿素プラントに大きな影響を与えることはありません。しかし、炭酸ガスの供給停止はダイレクトに尿素生産をストップさせますので、アンモニアプラントと尿素プラントは”一心同体”の関係にあります。
この二つの例とは異なるのが”アンモニアプラントとメタノールプラント”のインテグレーションです。メタノールプラントの原料は天然ガスですが、主成分であるメタン(CH4)と添加されるスチーム(H2O)と製品であるメタノール(CH3OH)を比べるとわかりますように水素(H2)が余剰となります。この水素はメタノールプラントの心臓である水蒸気改質炉にて燃料として再利用されています。そこでアンモニアプラントから必要量の炭酸ガスをインポートすれば、同じ天然ガス量からさらに多くのメタノールを生産することが可能となります。
このインテグレーションではアンモニアプラントの運転停止による影響は副原料の炭酸ガスの供給停止に限定されますので、インテグレーションによるリスクは小さいように見えます。しかし、実際にはこのリスクは予想以上に大きなものだったのです。
この続きは次回にお話しします。
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