プロセスの構築14 ユーティリティーシステム&合成管における温度分布
エタノール合成管における温度分布は入口出口温度、ガス組成、そして反応熱除去の仕組みにより変わってくる。
入口出口温度やガス組成は物質熱収支計算により一義的に決まってくるが、反応熱除去あるいは回収の仕組みは合成管の構造に左右される。§6.2の合成管熱回収で構造形式を熱交換器方式としているので、この構造を前提に温度分布を想定すると下図のようになる。図の左には反応器の構造を、右側に温度分布を示した。構造としてはチューブ(冷却管)とシェル(胴体)に分かれている。チューブ側には触媒が充填されており、ガスは上から下へ流れ、シェル側下方からは水が流入し、上方へ移動する間に反応熱を除去することで蒸発する。
また、温度分布図を見るとわかるように、流入したガスは最初は断熱的に温度上昇しピークを迎え、その後、冷却媒体である水・スチームと熱交換しながら、しだいに一定温度に落ち着いていく。その際、水・スチーム温度は一定に保たれており、ガス側の入口温度と出口温度の間を示している。
この時の入口出口ガス組成を示す。
- 入口および出口H2濃度(mol%) 73.83 / 44.02
- 入口および出口CO濃度(mol%) 0.59 / 0.87
- 入口および出口CO2濃度(mol%) 24.22 / 14.09
- 入口および出口N2濃度(mol%) 1.25 / 1.74
- 入口および出口C2H5OH濃度(mol%) 0.05 / 9.84
- 入口および出口H2O濃度(mol%) 0.06 / 29.44
- 入口および出口ガス量(kmol/hr) 13625.5 / 9797.5
この出口におけるガス組成から水の凝縮温度(飽和温度)を算出すると約175℃になる。つまり、反応ガス温度が何らかの原因で175℃以下になることがあれば、ガス中に含まれているH2Oの一部が凝縮することになり、それは触媒へのダメージやガス流れに影響を及ぼすことが十分に考えらられるので、是非とも避けなければならない。
このような可能性は果たしてあるのか。一つ考えられるのは、冷却管(チューブ)の内面である。つまり、チューブ外表面温度は水・スチーム温度に極めて近く、内面温度は主にチューブ壁の伝熱抵抗により決定される。チューブ材質(一般には合金鋼)の熱伝導度は良好なので伝熱抵抗も小さく、チューブ内面温度も水・スチーム温度に極めて近いと考えられる。
そこで、このエタノール合成管で回収するスチーム条件を以下のように設定する。
スチーム飽和温度=ガス出口側におけるH2O凝縮温度+10℃(余裕)=175℃+10℃=185℃
この温度条件であれば、ガスが反応の途中で凝縮することもなく、反応熱を適切に回収できるとした。(余裕10℃が十分かどうかは今後の検討課題)
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