プロセスの構築9 熱収支回収システム(2)
このエタノール合成の熱回収システムは、合成管に供給されるガスを合成管出口のガスで加熱するという簡単なシステムです。しかし、簡単なシステムであっても、複雑なシステムであってもエンジニアリング上考慮しなければならない項目がいくつかあります。それは、
- 熱収支計算結果をチェックし、入熱と出熱がバランスしているかどうかを確認する。
- 合成管出口ガスのように温度低下によりガスの一部が凝縮する場合、回収熱量を過大にしていくと被加熱ガスの温度が凝縮温度(dew point)を上回る可能性がある。これを温度交差と呼んでおり、実際上あり得ないので、このような場合には熱回収量を減じる必要がある。
- システムの運転起動時においては反応が十分に進行していないので合成管温度が低い。そのために合成管供給ガスは規定の温度まで加熱できないので、起動時の加熱方法を別途考えなければならない。
(1)のエタノール合成システムでの熱収支における入熱項目は”原料ガス”のみですが、出熱項目は”エタノール+水(粗エタノール)”と”パージガス”、”合成管回収熱”と”合成管出口ガス冷却熱”の4項目が上げられます。
”パージガス”とはエタノール合成システムから外部に抜き出すガスで、そこに含まれるイナートガス(反応に無関係なガス:ここでは窒素)の総和は原料ガス中の窒素量に等しく、窒素がエタノール合成システムに溜まらないように強制的に抜き出しています。
エタノール合成に伴う反応熱を除去し温度を一定にするために、何らかの方法で合成管から熱を回収する必要があります。それを”合成管回収熱”と称しています。
最後の”合成管出口ガス冷却熱”は熱交換した後の合成管出口ガスをエタノール分離器温度まで冷却する際の熱量です。
計算結果を見ますと、流入合計と流出合計の差はごくわずかであり、計算の精度としては0.1%以下なのでOKとします。細かな数値をホームページに載せていますので、そちらを参照下さい。また、パージガスの抜き出しを加えたフロー図を下記に示します。
« プロセスの構築8 熱収支と熱回収 | トップページ | プロセスの構築10 ユーティリティーシステム&冷却水収支 »
この記事へのコメントは終了しました。
« プロセスの構築8 熱収支と熱回収 | トップページ | プロセスの構築10 ユーティリティーシステム&冷却水収支 »
コメント